暗号資産のトラベルルール
今後どうなる?どうする?
こんにちは。昨日は2022年4月1日に段階的に始まる暗号資産のトラベルルールについて、その内容がどんなものなのかを解説しました。
今回は、このトラベルルールを踏まえて、どんな風に心構えや対策を立てていけばいいのか。世間では意見が分かれるとても難しい話題ですが、考察していこうと思います。
まず、前回お伝えしたトラベルルールで大事なポイントを私なりに抽出すると
「4月1日からはある条件の送金に限り、誰の送金なのかが取引所に保管されていくけど、これは完全実施までの布石だ。」
「なんだ、この上の条件すべてに当てはまる送金だけか」と思いきや、実はこれは次の段階にいくための初期形態です。
今後は「自分から自分への送金」は「自分から他人への送金」に拡大適用されますし、「国内取引所への送金」は「海外のトラベルルール実施取引所」などにも拡大適用されます。「10万円以上」はおそらくもっと引き下げられ、「BTCやETHだけ」から「すべての銘柄」に適用されていきます。
では、このように送金した情報が取引所に保存されるとどんな影響があるのか。それは「誰の資産がどこにあるか」を国が追跡できることになります。目的はもちろん「税金の徴収」です。
暗号資産の「税金」というと、つい「所得税」を思い浮かべますが、今回はそれだけでなく「相続税」や「贈与税」などが関係していきます。今まで、例えば株とか不動産とかの個人資産は誰かに譲渡すると税金がかかっていたわけです。暗号資産ももちろんそうですが、暗号資産の場合は匿名で資産を移動させることができるため、これが税金の抜け道になっているわけです。
なので、今回このトラベルルールが世界的に広まることで、“国家”は権威性を保つことができるわけです。
ただ、今回のトラベルルールについて、よく見てみると、完全実施後にもある課題が残ります。
これは前回の記事でも解説に使ったトラベルルールの内容ですが、このスライドの中央にある『個人ウォレットと海外取引所』。完全実施後の課題というのはここにあります。
どんな課題か。いくら取引所の出入金を国が把握しても、それが例えば個人のハードウォレットに送られた場合、海外の取引所でトラベルルールに則っていない取引所があった場合にどうなるのか。抜け道を残すことになります。なので、今後どうなるかを整理するために下のようなスライドを作ってみました。
左は暗号資産を送金する人、右は受け取る人。そしてどこから送金するか、どこで受け取るかを表しています。双方に「トラベルルール実施国の取引所」「トラベルルール未実施国の取引所」そして「個人ウォレット」と大まかに3分類してみます。
そして矢印が資金の移動ルートですが、赤の矢印が今回トラベルルールが目指していくもの。黒の矢印が今後整理されていくもの。
どうでしょうか。ちょっと矢印が多すぎますが、ピンクの❶❷❸の数字に注目してみてください。
❶の送金ルートは、今後FATF勧告が世界にさらに広まり修正されていくルート、いつか“違法”と扱われる可能性の高いルートです。
❷はというと、すでにトラベルルール実施で入口か出口、どちらかが把握できるルート。追跡していけば、何かしら保有者の情報にたどり着けるルートです。日本国旗のマークがありますが、前回もお伝えしたように取引所はこのルートの送金について【情報取得義務・リスク評価義務】があるわけです。つまりこのルートは放置されているわけでなくむしろ「追跡」されるもの、思ってください。
そして、トラベルルール実施後に注目されるのが❸のルート。❸は個人ウォレットへの送金ルートです。抜け道が残っているわけですが、これはFATFももちろん承知です。
2021年10月に更新されたFATFの通達では、まだ個人が保有する暗号資産ウォレットは対象にはなっていません。
https://www.fatf-gafi.org/publications/fatfrecommendations/documents/guidance-rba-virtual-assets-2021.html
将来的に、個人のウォレットに『KYC機能』が実装されていくことにはなるかもしれませんが、それは
「ウォレット=VASP(暗号資産サービスプロバイダー)」
とFATFが認識を変えてからになります。そうなってからウォレットも順次対応する流れになるかと思います。ウォレットのアプリ開発側やハードウェアのメーカーもこのことは想定はしているはずですが、今の段階では「うちのウォレットは将来的にKYC対応できるよ!」とは言いません。
というのも、KYCはただ「できればいい」というものではありません。暗号資産のメリットを損ねる可能性もあるからでです。
ビットコインは今まで“国に縛られない通貨”として価値を見出されて広まってきた測面があります。今回のトラベルルールやKYC導入は、“仮想通貨の自己否定”であり“Web3.0時代の逆行”という見方もできます。
国に依存しない、自由で自己責任な世界を望む人は世の中には一定の数いると思いますし、特に暗号資産に触れている人には多いと聞きます。
つまりこれは“思想”も絡んでくる話で、国に依存しない世の中を望むか。国の作った秩序の中で生きることを望むか。自分がどう生きたいか。それ次第で選択も変わってくるわけです。
少し話が逸脱したかもしれませんが、結論として私たちが今後どうするべきか、現時点の私の考えをまとめていくと
❶ハードウェアウォレットに資産を移す
これは自分の将来的な選択肢を増やす目的であり、FATFもこれを禁止しているわけではありません。取引所に預けておくことは国は望むことですが、それを100%正義とは限りません。一度国内取引所に入れた資産が取り出せない、持ち出せない、なんてことも最悪考えられます。資産の自由を確保しておき、今後暗号資産の法整備が進んだ時に資産防衛の可能性は広がるかもしれません。
ただし、もちろん全ての暗号資産を移すということではなく
❷複数の取引所やウォレットに分散する
「分散」はハッキング対策でも有効なやり方ですが、心配なのは海外の取引所の方だと思います。海外に置いた資産が国内に送れないことも想定します。先ほどのは国内から海外へ、でしたが今度は海外から国内へ、というパターンです。そうすると、何かしら迂回をして戻す作業が伴うかもしれませんが、そこに資産が多く入っているのはリスクが高いです。つまり、国内、海外、個人ウォレットなどあらゆる事態に対応できるようにする。そして
❸比率を見直す
これは、国内に●%、海外に●%、ウォレットに●%、というバランスをどう取るか。これは先ほど少し触れた思想の部分が関わってくるかと思います。また、人によってはDeFiや海外取引所に長期のロック(ステーキングサービスなど定期預金)をしている人もいると思います。それについてはいざとなった時に資金を動かしづらいので、金額はよく考えて致命傷を受けないように気をつけたいところです。
現時点ではここまでかと思います。ウォレットについては焦らず、今後FATFがウォレットをVASPに該当させるか、に注意しておけばよいかと思います。もっと言えばFATFだけでなく諸外国のウォレット規制の動きにも注視しておきたいところです。
以上、今回は暗号資産のトラベルルール導入に際して、今後どうすればいいか、について私の考えを紹介しました。
今後、個人ウォレットに関してはNFTもカギを握っていくので、そのことも情報発信していければと思っています。
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