4/1ついに始まる! 暗号資産の『トラベルルール』とは?
こんにちは。最近はウォレット関連の話が続いていますね。昨日はメタマスクというウェブウォレットの脆弱性とその対策についてお話しました。
今回はこのウォレットも関連する、仮想通貨を保有する人たち全員が知っておくべき話題です。
今年の4月1日以降、暗号資産の移動に関して取引所を対象に新たなルールが課されるよ、という内容を解説していきます。何に関するルールかというと、それが
『暗号資産のトラベルルール』
このトラベルルールとは何か。ざっくり簡潔に言うと今後、“暗号資産の入出金で、取引所が私たちの個人情報を保存する義務が発生する”ということです。“保存”するということは、金融庁や国税庁などが求めた場合に開示されることにもなるわけですが、それによって様々な影響が考えられると思います。それについては次回。今回はまず、このトラベルルールを理解していきたいと思います。
『トラベルルール導入について』https://jvcea.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/202203-travel_rule.pdf
今回は上記の『日本暗号資産取引業協会(通称:JVCEA)』のサイトに掲載されている“トラベルルール導入について”という通達文書を元に、ぱっと見では分かりにくいこの内容を私なりにまとめてみましたのでお付き合いください。
ちょっと目がチカチカしそうなスライドですが、内容をカンタンな言葉にして、どなたでもこれ1枚でおおよそのトラベルルールが分かるようにしてみました。(昨日Twitterでこの試作版をツイートしましたが、さらに整理したものになっています。)
右上部分の『だいたいの要点』を見ると80%の内容が分かりますが、この部分を補足していきます。
・同意しないと送金不可に
これだけを聞くと、なぜこんなことになったのか。なぜこのような事態になったのか。不思議でならないと思います。ですがこれは日本だけでなく、世界規模で守ろうとしているルールで、『FATF』というG7をバックにした国際団体が推し進めていることですので、“自主規制”とは言いながら“強制力の強いルール”になっています。このFATFがなぜこのようなことを言い出しているのか。それが
・導入目的はマネロン防止
マネロンとは『マネーロンダリング(資金洗浄)』のことで、要するには不正なお金を得た人が暗号資産を使って送金することで出所を分からなくする、そんな使われ方をすることを防ごうという意図があるようです。通達文を見るとなんとなくそれが分かるかと思います。
それによって金融庁が動いて、送付側の会員と受取側の会員の義務が発生したということです。ここでいう「会員」というのは最も分かりやすいのは暗号資産の取引所と考えておけばいいかと思います。(正確にはもっと広義ですが)「会員の義務」というのはどんなものか。
最初のスライドの下の部分を見てみると4/1とか10/1という日付が見える部分に「個人情報」とあるように、取引所は私たちのような利用者の情報をいつでも開示ができるように「保存する義務」が生まれたということです。内容は氏名・住所などここに書かれている内容が該当します。そしてその導入時期というのが
・4/1の項目はすぐ実施
・10/1の項目は予定
というわけです。
ああ、私たちが送金する度にこんな情報が取引所に残されるのか・・・。なんだか良い気持ちはしませんよね。ですが、これは実は序の口でして、というのも今回4月1日に適用される内容は限定的です。すべての送金取引が対象になるのではなく、上のスライドの左部分。
これを満たした取引の場合に限り、保存義務が発生します。少し安心された方いるかとは思いますが、そうではありません。序の口と言ったように、完全に実施されるとこの限りではありません。つまり、あらゆる取引が対象になると予想されます。ですが、いきなり完全実施すると、関係者もびっくりして対応に追いつかなくなります。特に大変なのは国内の取引所で、というのも
・送金手続きは❶~❹に変更
となるからです。今までは❶と❹のみ。そこに❷と❸が加わったというわけです。それゆえ段階的に進めていくということです。
では、気になる本番(本施行日)はいつになるのか。
・完全実施日は未定(※2022.3現在)
ということになっています。いつ来るかまだ示されておらず、4月1日の準備運動が整い、関係者がしっかり適用できると判断できた頃に示されていくと見ています。ちなみに取引所からの送金時にその情報の保存義務が課されるわけですが、そうすると気になるのが暗号資産のハードウォレットやウェブ上のウォレット。個人が保有してるウォレットについては、今回のこのトラベルルール導入では
・個人ウォレットは今は対象外
となっています。つまり、私たちが取引所からウォレットに送金した分は対象外になっています。また、もう1つ対象外なのが、トラベルルールがまだ導入されていない国の取引所への送金です。
以上が、今回導入が始まるトラベルルールの『だいたいの要点』解説でした。これでだいたい80%はお伝えできましたが、残り20%を補足するために下のスライドを見てください。
これまでの説明を聞くと、このスライドの意味もおおよそ分かるかと思いますが、このスライドでお伝えしたいテーマは
『どう段階的適用されていくか』
です。上のJVCEAに記載されている図を見て、なかなか頭に入ってこなかったのですが、自分で作り直すとスッキリしました。段階的にルールが厳しくなっていくのがこのスライドで分かります。
取引所は先ほど仕事が増える、とお伝えしましたが、それは下半分の『国内取引所』に送る場合の話でした。(このスライドの❸の義務)ですがさらに彼らには仕事があって、それが先ほど今回の対象外とお伝えした『ウォレット』や『トラベルルール適用されていない海外取引所』への送金時に必要な仕事です。
「やったーーー!個人ウォレットは対象外だ!」
と私たちが思ったのもぬか喜び。実は取引所ではこれらの送金をスルーすることはできません。それがスライドにある❶の「情報取得」という仕事と、❷の「リスク評価」という仕事。これがあるわけです。❶はどんな仕事なのか、例えばどこに送金したか分からないにしても、それに関して知り得る情報は取得しておくこと。(ブロックチェーンの送金データは追跡可能ですので、送金アドレスと送金金額くらいはカンタンに調べられます。)そして❶を踏まえてそれを何かの基準に照らして❷「リスク評価」するのだそうです。
「おいおい、対象外と言いながら探られるのか!」
つまりそういうことです。「これは何かの布石?」そう思わざるを得ませんね。とは言え、❶も❷もまだ完全実施前までは「努力義務」です。これが本格導入されたら、この作業が必須になる・・・どうなってしまうのでしょうね。この先のことの未来の話は次回で取り上げていきたいと思います。
以上、これがトラベルルールの私なりの解説でした。もっと良い説明ができたかもしれませんが、2枚のスライドに詰め込ませてもらいました。もっと理解を深めたい場合は、この後に先ほどのJVCEAの通達文書を読んでみてください。少しは理解がしやすくなっていると期待しています。
長くなりましたが、今回は以上です。
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