利用される
『風の時代』その3
前回(『利用される風の時代 その2』)について、記事を続けます。
前回お伝えした、今向かいつつある『グレート・リセット』と『風の時代』の接点。❶~❸部分の続き、下のスライドの❹~❻の項目を考察していきます。今回は特に『グレート・リセット』の本文から多くを引用しながら、さらにこの“不自然さ”を検証していこうと思います。
❹ 柔軟(脱密集化・脱経済優先)
4つ目は、いかに今の時代が”柔軟”に対応することを求められているか、をお伝えします。お風邪騒動後わずか半年余りで緊急出版されたこちらの本では、特に影響を受ける業種を以下のように分析しています。
「旅行、観光業、接客サービス業、エンターテインメント、小売業、航空産業、自動車産業」
その理由に
・消費者同士の間に物理的に広い空間を作るべき
・仮想スペースに移行しにくい
・オンラインで済ませるニーズが高まる
・顧客と従業員が接触せずに済む技術が登場する
・DIY(自己完結)型に消費が変わっている
・清潔さに対する脅迫観念が生まれている
このようなことを理由に挙げています。要するには従来のような“密集するビジネスモデル”を変えざるを得なくなっているということです。
そして、それらの業界からさらに玉突きで大きな打撃を受けかねない業界が
「不動産業、保険業、銀行業、教育産業」
その理由に
・知識労働は今後も最大限にリモートワークを活用する
・商業用不動産はもともと供給過剰だった
・保険業界は中断する事業の保険金支払いに迫られる
・銀行は不良債権が増え、十分な資本と引当金が必要になる
・オンライン教育では教職員も大部分不要になる
・大学はバーチャル教育の学位では価値が低下する
いままで社会の基盤を作り、人々の信頼を支えてきたことでお金が集まっていたこれらの業界が逆回転をはじめている。こう書かれています。そして、この本ではこの“経済活動”そのものについて、さらにこうも書いています。
「このパンデミックを通じて“命を守るべきか、それとも経済を守るべきか”という論争がまた始まった」
「このパンデミックのおかげで、ESG対応が進んできた」
……果たしてそうなのか。“命vs経済”論争などあったのか?パンデミックとESGの接点はどこにあるのか?いささか唐突に感じた表現でした。
ESGとは前回のブログでもお伝えしたように“経済だけでなく環境や人権など地球規模の多様性を重視する”という考え方です。ですが、お風邪騒動が始まりこの本が発刊されるまでのわずか半年間で「ESGが本当に必要とされた」とどうやって分析できたのでしょうか。“お金より大事なものがある”というのは分かりますが、その根拠がいまいちピンとこないのです。
“脱経済優先”という方向性だけを見れば、それは『風の時代』の特徴にとても近いものがあるのですが、それが人々が本当に求めて生まれてきたものか。疑問が残ります。
まとめると、このお風邪騒動によりいままで『地の時代』で育まれてきた“安定”が壊されつつある。さらにそこにESGが乗っかることで、「お金よりも大事なものがある」。そんな“柔軟”な価値観を持つべき時代になっているようです。(本当は今はお金回りが悪くなって、お金も命も両方大事な時期なのですが…)
❺ 自由(不平等の是正)
さて、ここからさらにこじつけていきます。こちらも本の抜粋ですが
「このパンデミックをきっかけに、私たちはあまりにも長い間、あまりにも多くの人が無視し続けてきた『不平等』の問題がどれだけ深刻かを改めて認識せざるを得なくなっている」
こう書かれています。なぜそう言えるのかその理由が2つ書かれていたのでまとめると
❶テレワークもできない下位層の生活水準が悪いこと
❷生活に本質的価値のある仕事の賃金が低いこと
これを再確認したそうです。そして、
「当面の危機を乗り越えた後には、風向きが一変して、逆方向(不平等の縮小)に向かう可能性がある」
こうも続けています。その理由に、
❸この不公平に対して人々の怒りが臨界点に達し、社会の反発が広がるかもしれない
……この本では「不平等の是正」は必要な根拠について、最初は❶❷と断定しながらも、それはあくまで❸…かもしれない、というフワッとしたものに変わっています。根拠があるのやら無いのやら。それでも今後は「過酷な労働環境」と「低い報酬」の両方を改善していくべきだ、と書かれています。
これはまさに前回の「ステークホルダー資本主義」の説明でも触れたように、今後は労使関係が改善されていく、という流れと重なります。要するに「ステークホルダー資本主義」も「ESG」も不平等の是正が目的にあって、それによって今回“自由”を獲得できるのは、今まで経済的に恵まれていなかった人々です。富裕層には我慢してもらい、恵まれていない人たちを底上げする。
お風邪騒動をきっかけに、このような縦型社会構造から横型社会構造へ向かう。一見見栄えはいいのですが、この図はきちんと批判的に見てください。というのも、あの超大国がスローガンに掲げている”共同富裕”も実はこれを目指しているからです。そして最後の帰結部分を用意していますのでもう少しお付き合いください。
❻ 革新(デジタルトランスフォーメーション)
こちらも本文の引用ですが
「パンデミックはデジタルトランスフォーメーションがブレイクするきっかけになった」
何でも「パンデミックによって…」と結びつけるこの本。最後はこのデジタルトランスフォーメーション(DX)とつなげています。DXを簡単に言うと「デジタル技術による豊かな生活改革」。お風邪対策のためにデジタル化技術がどんどん活用すれば、人々の物理的な接触を避けられる。あるいは人を介さずに自動化、効率化させる技術が開発される。
また本ではこのようにも語っています。
「デジタル化に向かうのを規制当局も支持し、後押しするだろう」
「非接触エコノミーへもはや行く手を阻むものなどない」
「企業はコストを抑えられるオートメーション化やロボット化がますます求められるようになる」
ポイントはDX技術の普及と共に人が必要とされなくなるところではないでしょうか。接触を避ける目的で普及していくDXの技術がやがて人の代わりになって経済を動かし、やがては人を養っていくことになるわけです。
技術が人を養う、というと聞こえはいいですが、これは「技術を持つ者が人々を養う」とも言えます。つまり、上のスライドで示した台形型の社会構造の上には、実はごく一握りの”所有する層”が存在していたわけです。これは陰謀でもなんでもなく、DXが進んだら誰もがカンタンに想像できる未来だと思います。
以上、これまで『風の時代』に適応しよう、と呼びかけきた私ですが、実は今向かいつつある世の中も『風の時代』の特徴によく似たかたちをしていた。3回に分けてこのことをお伝えさせてもらいました。
ですが、今向かいつつある世の中はいささか人為的で不自然でやり方も強引です。グレートリセットが『風の時代』に重ねようとしているかは分かりませんが、私が信じているこれからの時代は“心に正直に生きること”が肯定される時代。少しちがうんですよね。
だから、「これは時代の流れだから仕方ないよね」と今起こることに我慢してしまうのも何か違う気がするわけです。“人に作られるもの”より“自分で作るもの”を大事にした方がいい。もし今の生活で違和感を感じているものがあれば、それが正しい感覚だと思います。
こんな感じで今回は締めくくりたいと思います。次回は、もっと前向きに“お風邪騒動”や“グレートリセット”後の世界をよりよく過ごす方法を考えていこうと思います。もしよかったら次回もおつき合いください。
(そして、ぜひこちらの本を皆で検証してみてください。)
“利用される
『風の時代』その3” に対して1件のコメントがあります。