どうなる?今後のステーブルコイン規制(後編)
こんにちは、マスオです。
今回は、前回に引き続きステーブルコインの将来像について考察していきます。
前回の記事では、様々なステーブルコインの種類を確認して、どんなタイプのステーブルコインが問題視されているかを整理しました。
結論としては、「アルゴリズム型」という供給量の調整をするタイプ、そして「暗号通貨を裏付け」にしたタイプ。この2つは現状は問題視される流れにあるようです。
そして今回はさらにこの1か月で話題に上がっている世界各国のステーブルコイン規制をまとめて紹介していきます。
まず、前日のこちらの記事から。
まずこれはアメリカのニューヨーク州が「ステーブルコインの規定を提示した」という記事です。
これによると、この3つの条件が提示されていました。
1.資産の裏付けと償還(換金)可能性
2.準備金に関する要件
3.独立した監査
これが現状で最も具体的にステーブルコインの基準を明確にしたものだと思います。カンタンに表現するとこうなります。
1.資産の裏付けと償還(換金)可能性
▶会社の資産とは別に「返金用の資金」がある
▶それが米国内の預金取扱機関に保管してある
2.準備金に関する要件
▶現金(米ドル)と米国債
3.独立した監査
▶米国の公認会計士から月1の検査を受ける
ちなみに適用しているステーブルコインは以下の3つだけだそうです。
・USDP(Paxosが発行元)
・BUSD(バイナンスUSが発行元)
・GUSD(GMO米国法人が発行元)
ちなみにUSDCを運営するCircle社は、ここには入っていません。ニューヨーク州に暗号通貨取扱ライセンスはありますが、現時点でステーブルコイン『USDC』は上記の適用には至っていないようです。
なお、USDTは接点が確認できませんでした。
このUSDCとUSDTについては、このニューヨーク州の基準に照らし合わせて表を作ってみましたので、比較してみるといいかと思います。
以上が、現時点でステーブルコインについて最も具体的な基準を提示しているニューヨーク州の規定内容でした。
続いてこちらはイギリスのステーブルコインについての記事。
この記事ではイギリス政府がステーブルコイン発行者の破綻を想定して規制の必要性を述べた記事です。
どうやら「FMI SAR」という制度を改正して、万一の場合の顧客資金の返還を確保する方向で進めるようです。現在パブリックコメントを受け付けて、8月には方向性が見えてくるとのことでした。
そしてもう1つイギリスについて。
先月5月15日に英国女王による「支払い手段として使われるステーブルコイン」についての言及が話題になりました。
しかしこの女王の発言は誤解されている、というのがこちらの記事。
真意は「ステーブルコインの合法化」ではなく、「ステーブルコインの規制」だったと語られています。というのもイギリスではもともと合法だった。この女王の呼びかけはイギリス国内の銀行やイングランド銀行への呼びかけだ、とこの記事では締めくくっています。
ここから見えること、それは世界のステーブルコインというのは、
・銀行が発行するもの
・自国で発行するもの
・法定通貨と調整するもの
こういう見方ができると思います。
その最中、昨日でしょうか。テザー社がなんとイギリスのスターリングポンドにペッグしたステーブルコイン『GBPT』を発行する意向、との記事がありました。
果たしてこれは実現できるのか。テザー社の現状から考えるとかなり風向きが厳しいように思います。
最後はアメリカFRB(連邦準備制度理事会)のステーブルコインに関する見解について。
・十分な流動性のある安全な裏付け資産
・(運営の)透明性の欠如
・レバレッジ取引による需要変動の不安定さ
これらを取り上げて、ステーブルコインの脆弱性を報告していました。FRBなどの中央銀行も「自分を棚に上げて・・・」という気になってしまいますが、少なくともFRBはこういう内容を取り上げていました。
一方ヨーロッパはどうでしょうか。ECB(欧州中央銀行)によると
もはやECBはステーブルコインを門前払いしているようです。というのもすでに『デジタルユーロ』に動いているからです。ECBが重要視しているのは
・欧州以外の決済システムは金融主権を脅かす
・公的機関があってこその決済システムだ
と、わざわざ不安定にするようなステーブルコインの仕組みを導入するのは「幻想だ」とまで語っています。
そんな中、USDCを発行するCircle社がユーロステーブルコイン『EUROC』に果敢にも挑戦という記事。
これらのことを踏まえて、ステーブルコインの今後についてまとめると
①「健全な財務」という壁
②「金融機関」という壁
③「中央銀行」という壁
この3つを乗り越えてこそステーブルコインは生き残れる、ということでしょうか。
1つ目はクリアするべき最低限の条件です。ここを満たしたならば、次に②は「資産」として金融機関の口座に置けるかどうか、が問われ、さらに③中央銀行が発行するCBDCの利点と天秤にかけたときにステーブルコインの存在意義を示せるか、需要・用途があるのか、と思いました。
以上、今回はステーブルコインの今後について考察してみました。ステーブルコインの前途は多難ではありますが、改めてステーブルコインというのは世界各国の枠だけで考えるとメリットは見つけにくいように思いました。
もしかしたら、テザー社もイギリスポンド、Circle社もユーロ展開していたように、ステーブルコインの世界展開させて勝負するフェーズに入ったのかもしれません。
先日上げたYouTube動画でも、さらに画期的なステーブルコインを展開させようとしている、という内容。まだご覧になっていない方はぜひ見てみてくださいね!