どうなる?今後のステーブルコイン規制(前編)
こんにちは、マスオです。
今回は、ここ1か月近く世間を騒がせている仮想通貨のステーブルコインについて。
6月現在も20兆円はあると言われているこのステーブルコイン市場ですが、今後規制されていくとなると、どんな線引きがされていくのか。
現時点で見えてくる"ステーブルコイン規制”の将来像を、今回と次回の記事で考察していきたいと思います。
まず1つ目の線引きは、
「担保型」か「アルゴリズム型」か
これが今最も話題にされているところで、この違いが一体何なのかを整理していきます。
まず「担保型」というのは、発行元が何かしらの信用に値する資産を保有したカタチで発行されるタイプのステーブルコインです。
それに対して「アルゴリズム型」というのは担保を信用の根源にするというより通貨の供給量を調整することで、売られ過ぎたら供給量を減らし、買われ過ぎたら供給量を増やす。
そうすることで、たとえばその通貨の価値を"1ドル”に維持できるように設計されたタイプのものです。こういう仕組みがアルゴリズム型です。
そして先月5月に話題になったUSTというステーブルコインは後者の「アルゴリズム型」。しかしその自動調節する仕組みが大量の売り浴びせに耐えられず暴落してしまいました。
しかもその安全装置として用意していた別の通貨『LUNA』の準備金であったビットコインを売っても売ってもUSTは元に戻りませんでした。(これが5月の仮想通貨暴落のきっかけでした)
これを受けて叫び出したのがイーサリアムの創業者ヴィタリック氏とバイナンスCEOのCZ氏。
この業界を創ってきた人たちが火消しのためか、「原因」「犯人」を特定するような発言が見られました。そのようなこともあり、また別の通貨にも影響しました。
【DEI】(直近のチャート)
というUSTに類似したFANTOMチェーンのアルゴリズム型ステーブルコイン『DEI』も暴落。この辺りから、「やはりアルゴリズム型はダメなんだ」というのが世の中の合意されたかのようになっています。
よって今はステーブルコインの生き残る道は、「担保型」しかなくなった。
すると、次に考えるべきは「担保型」の中身。どういう担保があれば信用に足りる通貨と言えるのか。それをここ1か月近く世界各国の規制当局も議論しています。
ただ「担保型ステーブルコイン」と一口に言っても色々とあって、たとえば
A:100%以下のタイプ
B:100%担保を用意するタイプ
C:100%以上のタイプ
こういう風に分けられます。Aの例としては、
【USDT】
【USDC】
併せると市場に流れるステーブルコインの80%近くを占めるほどの2大巨頭銘柄。この2つの発行元の裏付け資産は「発行量の100%以下」の準備金をもとに運営されています。
こちらは2021年12月の時点のUSDTを発行するテザー社についての記事。発表された公開情報によると、USDTの裏付け資産は「現金、現金同等物、短期預金、コマーシャルペーパー」が約84%。
コマーシャルペーパーとは無担保の企業が発行する短期の約束手形で、その割合が高いようです。何とも心もとない資産が含まれていたのが現状でした。
なので裏付け割合は現金100%より明らかに低いことが分かります。これで果たして本当に大丈夫なのか、怪しいものがあります。
それに対してUSDCはというと
上から、現金と現金同等物、譲渡性預金、米国債、コマーシャルペーパー、社債、米国地方債と米国エージェンシー証券、となっています。若干ですが現金同等の100%には満たない計算です。
ただ、今後は規制の在り方が見直されていくにつれ、この下の3つは外されていくと見ていますので、テザーはより多くの現金同等の資産を用意しなければいけなくなりそうです。
ならばステーブルコインの裏付け資産は100%がいいのでは?という「B」の事例としてはこんなものがあります。
【PAXG(Pax Gold)】
このステーブルコインは、米ドルではなく実物資産の金(ゴールド)の価格と連動するタイプのステーブルコインです。これは金(ゴールド)に完全に100%担保されている通貨と言われています。また
【XUAT(Tether Gold)】
これはさきほど取り上げたテザー社が発行する、PAXGと同じ仕組みの通貨です。テザー社もこのようなものを発行しているのですね。
一方で、「C」の事例、100%以上の過剰担保型のステーブルコインもあります。たとえば
【DAI】
DAIはMakerDAOが発行するステーブルコインで、米ドルにペッグされています。そしてこれはDAIの流通量の150%相当のイーサリアム(ETH)やその他の暗号通貨に支えられています。
ただし、これはETHの価値が棄損した場合に、150%相当と言われていたものがじわじわと下がって話題になることも想定できます。根本的には暗号通貨に裏付けられた通貨ということで、先ほどのLUNAに近い構造とも捉えることができます。
すると、どれもこれも信用できないじゃないか。やっぱり暗号通貨などけしからん!と思うでしょう。
ですがここで面白い比較をしてみます。現行の世界各国の法定通貨の仕組みと比べてみます。
たとえば日本円という通貨は「担保型」なのか?それとも「アルゴリズム型」なのか?
答えは両方ともです。
2020年12月時点の日銀の資産はこのとおり。
現金(その国の法定通貨)や国債などがメインになっていて、他にも金などの実物や株式なども準備資産になっています。
これを見て先ほどのUSDTと比べるとどうなの?と考えると、日本政府なんていう世界一の借金を抱えている国の債券(国債)を半分近く持っている時点で「うーん・・・これって安全なの?」と思ってしまいます。(色々と考え方はありますが)
一方で、日銀は政策金利を上下させたり、財政出動をしたりして供給量を操っていますので、これはまさに「アルゴリズム型」の仕組みが採用されている、と言っていいと思います。だから日本円は「担保型」であり「アルゴリズム型」でもあるわけです。
しかし、現在日銀はこのアルゴリズム型が機能していません。
というのも、インフレ退治のために金利を上げないといけない局面でありながら自分の首も締めるため金利は上げられない。
一方でここ10年以上無制限の金融緩和を続けていて、供給量はジャブジャブと金余りを生んでいる。
もはやアルゴリズム型の「ア」の字も出ないくらい機能不全に陥っているのが分かります。
要するに、今の国の発行する法定通貨と仮想通貨を比べた時に、「担保」の面でも「アルゴリズム(供給量調整)」の面でもよっぽど今の仮想通貨の方が健全、という見方もできるわけです。
子供に「ダメ」と言っていることを親がやっている、みたいな話ですが、それがまかり通らないのが今の世の中の仕組み。今の秩序を作っている側が正義ですので、それに従うしかありません。
すると今後世界各国はステーブルコインにどんなことを要求してくるか。
「アルゴリズム型」はダメだ、と言われているようで、ならば「担保型」なのか。ならば担保をどのように保有していればいいのか?
これについて最近のニュース記事でもたくさんヒントが見えてきていますので、次回はさらに具体的にステーブルコインの規制について展望していきたいと思います。
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